カスタマージャーニーとは?基本的な概念やマップの作成方法について解説!
カスタマージャーニーとは、ユーザーが商品・サービスを認知して、情報を収集し、最終的に購入を決定するまでの一連の流れのことです。顧客との関係を深め、ビジネスを成功に導くためには、ユーザーがどのようなプロセスを経て、商材へとたどり着くのかを理解することが重要です。
カスタマージャーニーを明確にすることで、企業は顧客の視点からマーケティング戦略を設計でき、より効果的なアプローチが可能になります。
本記事では、カスタマージャーニーの基本的な概念や重要性について解説します。さらに、カスタマージャーニーマップの作成方法として、具体的な手順とポイントもあわせて紹介します。
目次
カスタマージャーニーとは
カスタマージャーニーとは、顧客が自社製品を認知してから購入に至るまでのプロセスのことです。ユーザーが、どのように製品を知り、どんな強みに関心をもって購入するのかという流れを定義していきます。そして、そのプロセスを可視化したものが「カスタマージャーニーマップ」です。
インターネットやスマートフォンの普及で、ユーザーとの接点は多様化し、オウンドメディアや口コミサイト、比較サイトなどを活用した情報収集も一般的になりました。
そのため、製品購入までにはいくつものプロセスが生まれ、そのときの思考や行動を整理して、適切にアプローチすることが求められています。
カスタマージャーニーマップ自体は、90年代にOxfordSMが「どのようにサービスをデザインするか」といったアプローチに活用したのがはじまりで、サービス設計において最もよく使われるフレームワークとして利用されてきました。
さらにそのあと、フィリップ・コトラー(Philip Kotler)氏の著書「マーケティング4.0」にも記され、日本のマーケティング分野においても広く浸透しました。
カスタマージャーニーマップが重要視される理由
SNSや口コミサイトなどの登場で、情報拡散のスピードは加速し、消費者も手軽に求める情報を収集できるようになりました。情報社会のなかで、自社製品を選んでもらうには、他社との差別化が必要です。そのためには、顧客の課題解決につながるようなアプローチを実行することが非常に有効です。
カスタマージャーニーマップを活用すれば、顧客視点で購入までのプロセスがつかめ、リードの行動や感情の細かな変化を理解することができます。
「製品をはじめて知ったときには、どのような情報が必要か」「検討中のときは、どう後押しをすれば購入へとつながるのか」といった、取り組むべき施策が見えてくるでしょう。
このように、顧客の属性や感情面などを含む購買プロセスに対して、適切なマネジメントを行う必要性が年々高まっています。
また、最近ではマーケティング戦略も複雑化しており、見込み顧客とコミュニケーションを取る方法もひとつではありません。Web広告やSEO、メルマガ、コンテンツなど、多くの企業で複数の施策を並行して進めています。
部署を超えて複数のプロジェクトを進めるためにも、カスタマージャーニーを設定して、方向性を共有しながら展開することに重点が置かれています。
カスタマージャーニーが古いといわれる理由
カスタマージャーニーは、顧客の購買プロセスを理解するために有用な概念ですが、近年では「もう古い」「時代遅れ」と指摘されることも増えてきました。
その背景として考えられるのが、現代ビジネスの急速な環境変化です。顧客の行動や期待が、以前とは大きく異なっていることが挙げられます。
デジタル化の進展で、顧客が情報を得る手段が多様化しました。これにより、カスタマージャーニーではカバーしきれないほど、複雑な購買プロセスが生まれています。
たとえば、予想外の衝動的な購入があったり、商談中の企業が競合を検討しはじめたり、顧客の購買経路がカスタマージャーニーのような直線的ではなくなってきています。一度興味を持った製品やサービスから離れて、再び戻ってくることもあります。このような、同じプロセスを何度も行き来するケースは、カスタマージャーニーマップでは対応しきれません。
また、企業に対する顧客の期待は年々高まっており、迅速な対応やパーソナライズされた体験が求められるようになっています。そのため、企業はリアルタイムで顧客のニーズに応える必要があり、いままでのカスタマージャーニーマップでは通用しなくなりつつあります。
それでも、カスタマージャーニーマップの視覚的で統合的な分析は、顧客中心のマーケティング戦略を立てるために有効とされています。最新のデータを取り入れて定期的に更新することで、変化する顧客の行動やトレンドに対応できる柔軟なツールとして機能するでしょう。
カスタマージャーニーのメリット
ここからは、カスタマージャーニーの代表的なメリットを4つ紹介します。
顧客視点に立てる
戦略を練るときは、どうしても企業側の視点に偏りがちですが、カスタマージャーニーを活用すれば、顧客視点に立つことができます。顧客が、どのように製品やサービスを認識し、利用するかを深く理解できます。
これにより、顧客のニーズや期待に応じた効果的なアプローチが可能となり、顧客満足度の向上につながります。購入前のリサーチ段階で顧客が何を求めているか、購入決定の際に何が妨げとなるのかといった具体的な課題も見えるので、施策を選定しやすくなるでしょう。
チーム内での認識の共有
多くの企業では、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスなど、複数の部署が協力して顧客との関係構築を目指しています。そのため、各部署がそれぞれの視点や目標にもとづいて活動していると、一貫性を保つことが難しくなります。
カスタマージャーニーを設定すれば、すべての部署が購買プロセスを一貫した視点で理解し、共有できるようになります。
具体的には、カスタマージャーニーマップを作成するために、各部署が集まり、顧客がどのような流れで自社製品にたどり着くのかを分析します。このプロセスで、チーム全体が顧客のニーズや課題を共通のフレームワークで捉えることができ、各部署が一貫した目標や対応を提供できるようになります。
部門間のコミュニケーションも円滑になり、効率的な連携が可能となるでしょう。
KPIが明確になる
カスタマージャーニーを利用するメリットとして、KPI(重要業績評価指標)が明確になるという点も挙げられます。各フェーズで達成すべき目標が見えてくるので、それにもとづいたKPIの設定が可能になります。
たとえば、「認知」のフェーズなら、KPIはWebサイトのアクセス数や平均滞在時間などが適しています。検討段階なら、デモの申し込み数や問い合わせ数がKPIとなるでしょう。このように、カスタマージャーニーで顧客の行動を把握することで、各フェーズで適切なKPIを設定できます。
ブランド価値の向上
顧客体験の品質向上においても、カスタマージャーニーは大いに役立ちます。カスタマージャーニーを設計することで、企業は顧客がどのように自社ブランドと接触して、どんな体験をしているのかを把握できます。これにより、顧客のニーズや期待に応じた一貫性のあるサービスを提供することが可能になるでしょう。
たとえば、マップを作成することで、各タッチポイントでの顧客体験を最適化できます。情報収集から検討、購入、そしてアフターサービスに至るまでのすべての段階で、ポジティブな体験を提供できれば、顧客満足度は向上できます。ブランドへの信頼感が高まり、ロイヤルティも強化されます。満足した顧客は、リピーターとして、ほかのユーザーにブランドの魅力を口コミで広めてくれるでしょう。
カスタマージャーニーのデメリット
一方、デメリットとしては「作成に時間がかかる」「効果測定がしづらい」の2つが挙げられます。
作成に時間がかかる
カスタマージャーニーは、自社の理想ではなく、事実やデータなどにもとづいて作成しなければなりません。顧客にアンケートやヒアリングを実施したり、Web解析のデータをもとにしたりといった手順を踏んで作成するため、ある程度の時間がかかることを想定しましょう。
各部署やチームからのフィードバックを集めて調整を行う必要もあるので、社内の連携も求められます。情報を統合し、わかりやすく視覚化する作業にも多くの工数がかかるでしょう。
効果測定がしづらい
カスタマージャーニーは、得られた効果を特定しづらいため、効果測定が難しいというデメリットがあります。多くのタッチポイントや複雑なプロセスを含んでいるため、顧客がどの経路を通って購入に至るかを正確に把握するのは容易ではありません。
たとえば、顧客がWebサイト、SNS、メルマガなど複数のチャネルを利用して情報を収集した場合、それぞれがどの程度、購買意欲に影響を与えたかを正確に測定するのは難しいです。また、顧客が何度もフェーズを行き来する場合、そのプロセスを追跡して分析するのには、多大な時間がかかるでしょう。
さらに、カスタマージャーニーの効果を測定するためには、多くのデータ収集と分析が必要となり、高度な専門知識も求められます。社内に詳しい人材がいない場合は、マーケティング支援会社にサポートを仰ぐことで、効果測定のポイントなどを見極められるようになるでしょう。
カスタマージャーニーマップの作り方
カスタマージャーニーそのものは概念のため、マーケティング施策に活用するときは、マップ形式にして可視化する必要があります。ここからは、カスタマージャーニーマップの基本的な作り方について解説します。
無料の作成・活用ガイドもご用意しました。ぜひお役立てください!
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基本フォーマットについて
横軸には「プロセス」
カスタマージャーニーマップの横軸には、ユーザーが自社製品を認知して購買に至るまでのプロセスを設定します。事業内容によって、消費者の購買行動は異なります。この後に紹介する「AIDMA」や「AISAS」など、さまざまなフレームワークを利用して、効率よく設定しましょう。
縦軸は「自由に」
縦軸は、商材に合わせて自由に設定します。「ユーザーの行動」「ユーザーの思考・感情」「タッチポイント(マーケティング施策)」などがよく設定される項目です。悩みやニーズ、リアクションなど、購入ステップを次の段階へと引き上げるために必要な項目を設定しましょう。
ペルソナの設定
まずは、自社のペルソナ像をはっきりと定義します。ペルソナとは、架空の顧客像のことです。名前や年齢、性別、居住地、職種、趣味などを細かく決めて、具体的なユーザー像を設定します。
ペルソナを設定することで、どのような情報を求めているのか、どういったコミュニケーションが必要なのかがわかり、顧客のニーズがつかみやすくなります。
ペルソナ設定で利用される項目は以下のとおりです。
- 年齢
- 性別
- 最終学歴
- 職業、役職
- 年収
- 家族構成
- 居住地域
- 趣味
- よく使用するSNS
- 利用しているデバイス
横軸の設定
ペルソナ設定ができたら、マップの横軸となる顧客の購入までのプロセスを定義します。ペルソナが、実際に自社の製品を認知し、導入に至るまでの経路を可視化します。既存顧客にアンケートや聞き取りを行って、具体的な情報をもとに作成していきましょう。
購買行動モデルを表現したフレームワークもあるので、参考にしてみると設定しやすいでしょう。
以下は代表的なフレームワークです。
名称 | プロセス内容 | 特徴 |
---|---|---|
AIDA(アイダ) | Attention(注意) | 1920年代に生まれた概念で、購買購買モデルのなかで最も古典的な理論です。商品認知から購入までを4つにわけて分析します。 |
Interest(興味) | ||
Desire(欲求) | ||
Action(行動) | ||
AIDMA(アイドマ) | Attention(注意) | 上記のAIDAに「Memory」を追加した購買行動モデルです。情報が届いてから、すぐに購入へとつながるのではなく、一時的な記憶を経てから購買行動へ移行するといった考え方になっています。 |
Interest(興味) | ||
Desire(欲求) | ||
Memory(記憶) | ||
Action(購買行動) | ||
AISAS(アイサス) | Attention(注意) | 2004年に電通が提唱した理論で、消費者の購買行動モデルを5つの項目で表現。消費者が商品・サービスの認知から、商品の購入、SNS上での拡散といった一連のプロセスを示しています。 |
Interest(興味) | ||
Search(検索) | ||
Action(購買行動) | ||
Share(共有) |
縦軸の設定
ユーザーのプロセスが定義できたら、縦軸を設定します。先ほどお伝えしたように、商材に合わせて自由に設定できるので、ここでは「タッチポイント」「行動・思考」「施策」の想定についてご紹介します。
タッチポイントの想定
タッチポイントとは、顧客との接点のことです。具体的には、Web検索やSNS、オウンドメディアや問い合わせ、展示会、セミナーなどが挙げられます。
たとえば、「認知」のフェーズでは、Web広告やSNSなどが接点として考えられます。「比較検討」なら比較サイトや口コミサイトなどが代表的です。フェーズごとにユーザーとの接点は変化しますので、各段階を埋めていきましょう。
行動・思考を想定する
顧客の購買行動や思考を把握するには、ユーザーを深く理解することが重要です。カスタマーサクセスや営業など、日ごろ顧客と対峙している担当者から直接意見を聞いたり、データを共有したりしてリアルな行動を確認しましょう。ユーザーアンケートやインタビューなどの顧客の声を集約し、パターン化されている購買行動をつかむことも大切です。
施策の検討
ここまでの内容を整理して、効果的なマーケティング施策を検討しましょう。全体を俯瞰して「ユーザーはどのような情報を求めているのか」「どのような情報を発信すべきか」を考えていきます。選定する際には、「次のフェーズへ進めるために必要な施策」を選ぶことがポイントです。
カスタマージャーニーマップ作成のポイント
カスタマージャーニーマップ作成には、成功させるためのコツがあります。最後に作成ポイントを2つ解説します。
都合のいい設定にならないようにする
ペルソナを軸としたカスタマージャーニーマップのはずが、作業を進めていくうちに、自社の希望や思い込みなど作成者の主観が入ってきてしまうことがあります。
大切なのは、ペルソナに立ち返って顧客視点で作成することです。既存顧客の情報やデータにもとづいて作業を進めて、複数の部門でチェックするなど、主観を排除する仕組みを構築しましょう。
作成後も精度を高める
カスタマージャーニーマップは作成したら終わりではありません。作成後に、コンテンツの不足や施策の漏れなどのチェックをして、アップデートを続けることが大事です。市場やトレンドの変化でユーザーの行動や思考も変わります。成果が得られない場合は、その都度見直しを行いましょう。
まとめ
カスタマージャーニーは、企業にとって顧客理解とマーケティング戦略のポイントとなる概念です。顧客が、どのような過程を経て購買に至るのかを明確にすることで、企業は効果的なアプローチが可能となり、リードの案件化を促進できます。
顧客視点で、各フェーズに応じた適切なコンテンツや情報を提供することで、顧客満足度を高めるとともに、信頼関係が築けます。カスタマージャーニーマップの作成により、企業は自社のマーケティングプロセスを視覚的に把握し、具体的な改善策を導き出すことが可能になるでしょう。
また、顧客のニーズや課題をより深く理解し、ユーザーの期待に応える戦略も構築できます。これにより、企業は競争力を強化し、持続的な成長を実現できるでしょう。
クラウドサーカスの開発・提供している国産CMS「BlueMonkey」は、コンテンツマーケティングに役立つSEO設定や、ブログ形式で記事を投稿できるメディア機能、フォーム管理など、BtoB企業が必要とする機能を搭載しています。専門知識を必要とせず、すぐにWeb作成・更新が可能なので、カスタマージャーニーの効果を取り入れたコンテンツ作成に、ぜひお役立てください。
この記事を書いた人
クラウドサーカス株式会社 マーケティンググループ
CMS BlueMonkeyメディア編集部
プロフィール
2006年よりWeb制作事業を展開し、これまで2,300社以上のデジタルマーケティング支援を行ってきたクラウドサーカス株式会社のメディア編集部。38,000以上のユーザーを抱えるデジタルマーケティングツール「Cloud CIRCUS」を提供し、そこから得たデータを元にマーケティング活動を行っている。SEOやMAツールをはじめとするWebマーケティングのコンサルティングが得意領域で、目的から逆算した戦略的なCMS導入・Web制作や運用のサポートも実施。そこで得たノウハウや基礎情報を、BlueMonkeyのコラムとしても発信中。
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