オウンドメディアの目的とは?成功事例や目的別の指標をご紹介!
最終更新日:2024/05/20近年では企業や事業の規模を問わず、多くの企業が自社ホームページや公式SNSアカウントなどのオウンドメディアを運営しています。しかし、オウンドメディアがマネタイズ(収益化)するまでには時間とコストがかかると言われ、成果をみるための指標の立て方にも難しさを感じている人は多いのではないでしょうか。
本コラムでは、企業がオウンドメディアを運営する目的やメリットについて解説します。
ブランディング、ナーチャリング、採用分野のオウンドメディア活用事例もご紹介しますので、ご参考になれば幸いです。
オウンドメディアについては下記の資料でも解説しています▼
目次
オウンドメディアとは?
オウンドメディア(Owned Media)とは「自社が所有するメディア」という意味で、自社で所有するホームページのほか、ブログ、SNSアカウント、あるいは紙のパンフレットなどのオフラインの媒体を指す場合もあり、広義では自社で所有するあらゆるメディアを指します。ただしWebマーケティングの世界では、オウンドメディアという言葉はより狭い意味で使われ、特定の分野やテーマに沿った情報を発信するブログなどのコンテンツを含むWebサイトやWebマガジン、集客ツールとして活用される情報提供サイトなどを指すことが多いです。
そもそも「オウンドメディア」という言葉は日本では2010年頃に紹介され始め、企業が広告費をかけて情報を掲載するテレビ・ラジオ・新聞・Web広告などの「ペイドメディア(Paid Media)」、ブログやSNSでの口コミなど消費者やユーザーが起点となって情報を発信する「アーンドメディア(Earned Media)」(※Earnedは「獲得した」の意)とあわせた三大メディアのひとつとされています。
オウンドメディアの目的
オウンドメディアのおもなターゲットは見込み顧客です。また、オウンドメディア運営の最大の目的は、見込み顧客にとって必要な情報コンテンツや自社製品・サービスの情報などを提供することにより見込み顧客を「顧客」へと変化させ、長期的な関係を築くことです。
オウンドメディアからの直接的な収益は、基本的に広告売上のみです。オウンドメディアの運営により収益につながる間接的な効果を得るための手段としては、ブランディング、ナーチャリング(リードナーチャリング)、採用などが挙げられます。これらはオウンドメディア運営にあたっての「目的」であるとも言えます。
本コラムでは、企業がオウンドメディアを運営する目的と、それぞれの目的にあわせた具体的なアプローチについて解説します。さまざまな企業のオウンドメディア活用事例とあわせて、ぜひ参考になさってください。
ブランディング
「ブランディング」は企業や商品のイメージを印象付けることを指し、企業やメディアの価値を確立するための戦略を指します。その戦略を実現するための戦術にあたるのがマーケティングです。
認知拡大・方向性の決定のためのブランディング(戦略)と市場拡大のためのマーケティング(戦術)とは補完関係にあり、ブランディングのためには競合調査やペルソナ設計が必要となります。
そのための情報を発信するのがマーケティングの領域です。オウンドメディアの目的を「ブランディング」としたときはコンテンツマーケティングがおもな戦術となるでしょう。
オウンドメディアでブランディングを行う際のメリットはおもに次の5点です。
【自社メディアの保有】自社ドメイン、自社メディアを保有することでターゲットに合わせたサイトデザインやコンテンツ制作が可能。自由度が高く、広告費用を削減できる。
【企業的信頼の獲得】自社メディアを運営しコンテンツを配信することで、顧客の信頼と共感を高め、ファンの獲得につながる。ただしコンテンツの質や法的問題には留意が必要。
【見込み顧客の獲得】ブランドイメージに合わせたSEOコンテンツで幅広い層にリーチできる。中長期的な運用が前提となる。
【企業イメージの定着】サイトデザインやコンテンツに一貫した企業メッセージを反映させて認知拡大を図る。あわせて、顧客と中長期的なコミュニケーションをとることで企業イメージの定着と市場拡大につながる。
【SNSへの拡散】コンテンツが顧客の信頼・共感を得てSNSでシェアされれば、新たなファン層の開拓につながる。また、自社サイトのインプレッション(IMP、広告表示回数)が高まる可能性がある。
ナーチャリング
「ナーチャリング(リードナーチャンリング)」とは、見込み顧客を育成して購買につなげるためのアプローチを指します。見込み顧客を育成するには、自社商品についての情報を顧客に提供し、興味関心の度合いを高める必要があります。
そこで、オウンドメディアやメルマガ、セミナー(ウェビナー)などを通じて情報を提供し、商品への興味・関心度合いが低い顧客や、ある程度の興味・関心はあるが購入に至らない顧客に対して購入を促進します。
その際、商品自体がどんなに魅力的であっても、企業として信頼されていなければ購買につなげることは難しいでしょう。オウンドメディアを活用して自社への信頼度を高めれば、より効率的にリードナーチャリングを進めることできます。
オウンドメディアは、コンテンツを作成するのに労力とコストがかかり、立ち上げてから成長させるまでに時間がかかります。
しかし、見込み顧客の悩みを解決できるようなコンテンツを備えたメディアがいちど完成すれば、営業からアプローチを仕掛けなくてもおのずと見込み度を高めることができ、営業活動の効率化を図ることができます。
また、オウンドメディアにメルマガや資料請求の入力フォームを設置すれば、興味・関心度の高い顧客のリストを取得することができます。
この点もオウンドメディア運用のメリットであり、目的のひとつとしても良いでしょう。
採用
採用(リクルーティング)を目的としたオウンドメディアの活用は、採用に特化した自社メディア(いわゆる「採用オウンドメディア」)を運営・利用することを指します。「採用オウンドメディア」は自社サイトのなかのひとつのコンテンツを指すのではなく、ホームページの一部である「採用ページ」とも意義が異なります。
「採用ページ」はあくまでもエントリーを受け付けるための受け皿ですが、「採用オウンドメディア」は自社が求める人材からのエントリーを促すために「採用」というテーマに特化して自社をブランディングするメディアだととらえると良いでしょう。
採用に特化したオウンドメディアとはいえ、そのメリットは採用活動にとどまりません。
自社のビジョンや理念に共感し興味を持ってエントリーを検討した求職者とは、ゆくゆく顧客や取引先として関係が続いていく可能性があります。また、自社の理念や魅力、強みなどを伝えるコンテンツは自社の新人教育の教材としても活用できます。
採用オウンドメディアのために作成したコンテンツの効果は一過性のものでなく、コンテンツマーケティングの施策に沿って制作したコンテンツと同様に、長期的な視点で自社の資産となります。
広告売上
オウンドメディアからの直接的な収益を上げる唯一の方法は広告売上(広告収入)だと言われます。また、広告費をかけずに売上(収益)を上げることができる点はオウンドメディアの特長のひとつです。
オウンドメディアを立ち上げる際の初期費用としてはドメイン代やサーバー代が、コンテンツ制作を外部の専門業者に依頼する場合にはそれなりの制作費がかかります。
しかし自社で制作・運用と管理までを行えば、広告費をかけることなく自社製品やサービスの販売促進ができるのです。
オウンドメディアをマネタイズ(収益化)する方法には、広告掲載・有料コンテンツ配信・自社製品やサービスの提供(販売)の3つがあり、広告売上はこのうち広告掲載に直結するものです。
オウンドメディアの指標
ブランディング、ナーチャリング、採用と、オウンドメディアの目的別に設定すべき指標の例をご紹介します。ひとつのオウンドメディアに複数の目的を設定するケースもあるでしょう。集客したいターゲット層が同一なのであればWebサイトやアカウントを分ける必要はなく、ターゲット層が異なる場合はターゲットごとに分けるという考え方もあります。
ブランディング
ブランディングを目的としたオウンドメディアの場合、設定する指標は「指名検索の推移」や「会社案内のダウンロード数」などになります。
ナーチャリング
ナーチャリング(見込み客の育成)を目的とするオウンドメディアの場合、設定する指標は「リード獲得数」「セミナー(ウェビナー)申し込み数」などになります。また、「クリック率」「メルマガ開封率」「転送数」などの数値によって品質を測り、リピートを促します。
採用
ダイレクトリクルーティングが近年注目されている流れを受け、採用を目的としたオウンドメディアの指標はオウンドメディア経由の「エントリー数」で設定します。「エントリー数」のほか、「説明会への参加者数」や「面接辞退数」「内定辞退数」を指標に設定することもあります。
広告売上
オウンドメディアの目的を広告売上とする場合の指標は、「広告主が求めているターゲット属性に合致したユーザーがアクセスしているか」という観点で測ることが重要です。具体的には「PV(ページビュー)」や「ユーザー数」「会員数」などが指標となります。
目的別オウンドメディア事例
ブランディング、ナーチャリング、採用の目的別に、さまざまな業界・業種の企業が運用するオウンドメディアの活用事例をご紹介します。情報提供コンテンツの切り口や見込み顧客を中心としたユーザーへのアプローチなど、具体的な施策をぜひ参考になさってください。
ブランディング
「COMPASS(コンパス)」:株式会社GENEROSITY
https://compass-media.tokyo/
「COMPASS(コンパス)」はO2Oマーケティングやデジタルサイネージ、広告事業などを展開する株式会社GENEROSITYが運営するオウンドメディアです。
「世界の潮流から3年後の未来を想像する」をコンセプトに、SNSやWebマーケティングの動向を世界規模で分析し、海外のマーケティング事例を紹介しています。高度な分析力とグローバルなマーケティング活動を強みとする企業であることを印象付けるWebサイト設計に注目です。
「hintos(ヒントス)」:株式会社クレディセゾン
「hintos(ヒントス)」は「セゾンカード」で知られる株式会社クレディセゾンのオウンドメディアで、「あったらいいな」をテーマに暮らしの情報を届けるWebサイトです。
「ライフスタイル」や「ホーム・キッチン」などのカテゴリ別に多くの商品を紹介しつつ、週末を楽しく過ごすためのヒントとなる情報コンテンツも提供しています。
訪れたユーザーに魅力的な商品やライフスタイルを紹介することを通して、サービスページへのアクセスと自社カードの利用を促す設計になっています。
ナーチャリング
「クリスクぷらす」:株式会社クリスプ
「クリスクぷらす」は日本と東南アジアで教育メディア事業を展開する株式会社クリスクのオウンドメディアです。
中高生を中心とした学生と保護者をターゲットに、「『多様な生き方』を伝えるWebメディア」をコンセプトにした同サイトは、進路や人間関係のほか、思春期特有の悩みに答えるコンテンツや医師が体の悩みに答えるコンテンツなど学生のデリケートな悩みに寄り添う情報が充実したWebサイトになっています。
「通信制高校ナビ」「不登校サポートナビ」では、悩みを持つ子どもの保護者のニーズにきめ細かく応えることで企業としての信頼性を高めています。
「経理プラス」:株式会社ラクス
「経理プラス」は経理業務を効率化するためのシステム「楽楽精算」を提供する株式会社ラクスのオウンドメディアです。
経理業務の悩みを解決する記事や経理業務に必要なテンプレートなど経理業務の基本となる情報やツールを取り揃え、経理担当者ならブックマークせずにはいられない充実した内容のWebサイトです。
経理業務を効率化するためのノウハウ記事もあり、「楽楽清算」を活用するとどのようなメリットがあるのかをレビュー形式で紹介することで新規開拓と顧客数の拡大につなげています。
採用
「ジモコロ」:株式会社アイデム/株式会社バーグハンバーグバーグ
https://www.e-aidem.com/ch/jimocoro/
「どこでも地元メディア」がテーマの「ジモコロ」は、”地元の求人情報”に実績と強みを持つ株式会社アイデムと、笑いのエッセンスが効いたWebコンテンツ作りを得意とする株式会社バーグハンバーグバーグが共同で運営するWebサイトです。
「仕事」「場所」「小ネタ」など各地方の魅力を伝える情報や読み物のコンテンツは、実際に取材した一次情報をもとに制作されたものです。トップページからキャッチーなニュース記事風のタイトルが目を引き、求人応募者のうち一定数をこの「ジモコロ」からの来訪者が占めるという成果が出ています。
「メルカン」:株式会社メルカリ
https://mercan.mercari.com/
「メルカリの『人』を伝える」をサブテーマに掲げる「メルカン」は、フリマアプリ大手の株式会社メルカリが採用(リクルーティング)強化のために制作したオウンドメディアです。
オウンドメディアの特性を活かし、社員ひとりひとりの仕事への思いや願いにフォーカスした等身大のインタビューコンテンツを充実させているのが特徴です。応募者にあらかじめ読んでもらうことで入社後のミスマッチを防ぎ、人材の定着と早期活躍を促すことが狙いです。
地道に材料を集め、応募者が知りたい情報を継続的に配信することで、採用目的にとどまらず、既存社員の会社への愛着や組織としての一体感を高め、社員どうしのコミュニケーションのきっかけにもなっているオウンドメディアの好例です。
まとめ
オウンドメディアは広告費をかけずにSEO効果を高められるなど多くのメリットから、企業がオウンドメディアを持ち、運用することがほぼ当たり前になりました。それでも「オウンドメディアでどのように収益を上げればよいかわからない」という声はよく聞かれます。オウンドメディアでマネタイズを図っても成果が出るまでには時間がかかることが多く、オウンドメディア運営を始めてはみたが、成果を出せずに頓挫してしまった、という話も珍しくありません。
オウンドメディアの最大のメリットは、コンテンツを蓄積することでそれがそのまま資産になることです。
オウンドメディアをマーケティングに活用するには、ブランディング、ナーチャリング、採用など、本コラムに挙げたような目的別に具体的な指標を設定して地道に顧客にアプローチすることが大切です。オウンドメディアで自社の魅力や価値を伝えながら、顧客とのコミュニケーションの拠点としていけると良いでしょう。
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この記事を書いた人
クラウドサーカス株式会社 マーケティンググループ
CMS BlueMonkeyメディア編集部
プロフィール
2006年よりWeb制作事業を展開し、これまで2,300社以上のデジタルマーケティング支援を行ってきたクラウドサーカス株式会社のメディア編集部。38,000以上のユーザーを抱えるデジタルマーケティングツール「Cloud CIRCUS」を提供し、そこから得たデータを元にマーケティング活動を行っている。SEOやMAツールをはじめとするWebマーケティングのコンサルティングが得意領域で、目的から逆算した戦略的なCMS導入・Web制作や運用のサポートも実施。そこで得たノウハウや基礎情報を、BlueMonkeyのコラムとしても発信中。
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